マンションの常識を超える。【和をしつらえる】という贅沢
- 種別
- マンション事例
- 面積
- 100.50㎡
- 間取り
- 3LDK
- 工期
- 3か月
『和をしつらえる』という贅沢。
マンションの一室に現れた、静謐な「離れ」と「石畳」の物語。
ただ新しくするだけの「原状回復」や、機能回復だけの「営繕」では、決して辿り着けない境地がある。
100平米超というキャンバスにデザイナーが描いたのは、マンションという既成概念を超えた、唯一無二の「邸宅」。
◆日常から切り離される「石畳」のアプローチ◆
玄関扉を開けた瞬間、そこはもう無機質なマンションの共用廊下の続きではありません。
足元に広がるのは、高級旅館のエントランスを彷彿とさせる石畳の土間。
洗い出しのような風合いを持つ石材が、外の喧騒を静かに遮断し、住まう人の心を「オン」から「オフ」へと切り替えます。
あえて広くとった土間空間は、単なる靴脱ぎ場ではなく、ゲストを最初にもてなす「家の顔」。
壁面に施された格子や、計算された照明の陰影が、訪れる人に深い安らぎと驚きを与えます。
◆空間の美学:マンションの中に「離れ」◆
このリノベーションのハイライトとも言えるのが、玄関土間からガラス越しに望む*「和室」の存在です。
それは単なる一部屋ではなく、まるで母屋から独立した「離れ」のような佇まい。
玄関から直接アプローチできる動線と、リビング側からの動線を分けることで、客間としての格式と、日常のくつろぎを両立させました。
障子越しに柔らかく拡散する光、畳の香り。
「和をしつらえる」という贅沢が、ここにはあります。
機能と意匠の融合:計算し尽くされた「回遊動線」
100㎡超の広さを、ただ広いだけで終わらせない。
デザイナーがこだわったのは、暮らしのストレスを極限までなくす「回遊動線(サーキュレーション)」の構築です。
リビングを通らずとも、キッチン、洗面室、浴室へとスムーズに移動できる「裏動線」を確保。
家事の効率化はもちろん、家族それぞれの生活リズムが異なっても、互いの気配を感じながら程よい距離感を保てる設計です。
広大なLDKを中心に、水回りと個室が有機的につながるプランニングは、住まうほどにその快適さを実感していただけるはずです。
ディテールへの執念:「余白」を生むニッチ
一般的なリフォームでは、部屋を少しでも広く見せるために壁を薄く、収納を壁面に埋め込むのがセオリーです。
しかし、本邸ではあえて壁をふかし(厚くし)、ニッチ(飾り棚)を造作しました。
それは、お気に入りの花器を飾るため、あるいは季節のアートを愉しむための場所。
効率性よりも「美意識」を優先させたこの数センチの奥行きが、空間に圧倒的な深みと豊かさを生み出します。
スイッチプレートの位置一つ、巾木の高さ一つにまで神を宿らせた、デザイナー渾身のディテールです。
【Designer’s Note】
「マンションだから」という諦めを捨て、「マンションだからこそできる」空間の連続性を追求しました。石、木、光。素材の持つ力を最大限に引き出し、時が経つほどに愛着が深まる、そんな住まいを目指して設計しました。











